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宮下 康則 編 工務店経営

僕らもみんな出来なかった

僕らもみんなできなかった 宮下 康則(TMワークス株式会社代表取締役) 編

どうしても忘れられないことがあるものです。中学時代、新町中学の野球部でピッチャーをしていました。北区大会の準決勝。3対1で勝っていました。あと1インニングというところで日没。翌日、その1イニングのために再開が決まりました。私達は勝ったという気持ちで、明日の試合後はどこに飯を食いに行こうかなど軽口をたたいていました。

そして翌日、調子は悪くなく、疲れもありませんでした。あと1インニングで決勝戦かと思いながらマウンドに上がりました。あっという間の出来事でした。味方にエラーはなく、ただ、ただ打たれたのです。打たれ始めると、ストライクを取りに行くのが不安になり、そしてカウントを悪くして飲み込まれるように真ん中に球が集まり、また打たれました。昨日、あれだけ抑えられたのに今日は嘘のように打たれたのです。そして4対3で逆転負けを喫しました。全員が呆然としながらホームベースを挟んで相手チームと挨拶をしました。球場を出た後、近くの公園で、監督が無言のまま一人一人の背番号をはがしました。私達の引退の時でした。

昨日、あれだけ抑えられたのに今日はどうして打たれたのか。何度も何度も考えました。自分のせいで負けたのだと自分を責めました。「期待を裏切って申し訳ない」とみんなに謝りましたが、誰も私を責めませんでした。そして気付いたことがありました。前日、私は試合が終わっていないのに勝ったと浮かれていたのです。その心の隙に相手の絶対あきらめない気持ちが入り込んだのです。私の相手を抑えようとする気持ちを超えて私を圧倒したのです。気持ちで負けていたのです。「絶対にあきらめない」「あきらめたら終わりだ」という気持ちを私は学びました。

私は高校卒業した後、家業を手伝いながらサッシの職人として仕事をこなしていました。その中でいずれは会社を興したいと考えるようになりました。それは職人の仕事は不安定で仕事があるときの差が大きく、収入が安定していませんでした。また怪我をしたら仕事が出来ません。結婚をしていましたし、子供もいましたが三十歳の時、周りの反対を押し切って会社を興しました。「自分が諦めたら終わりなんだ」「現状に満足したら終わりなんだ」「今しかない」という気持ちが湧いてきました。そうです、中学時代の野球の試合で負けた時の気持ち。あの時、無かった気持ち。今度は「絶対にやる」。

会社を興す前に会社の作り方を学びながらお客さん回り、スタッフ集めを並行して行いました。そして内装現場へ研修後スタッフを派遣する仕事を行えるようになりました。会社設立から19年。少年野球の監督も行いながら、地域の中で生かされている自分を感じています。今も野球部仲間との付き合いは続いています。みんな、「あきらめるな」。「速く、丁寧に」をモットーに私も頑張ります。

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